七竈の食器棚

徒然なるものを竃につめこんで。

axes femmeを卒業する

私がかつて好きだった、かつ今も好きな3大ブランド。

axes femme、LIZ LISA、Secret Honey

どれもフリルやリボンがたっぷり使われてはいるけど、ロリータかと言われれば違う、可愛い服のブランドだ。

私はこの中で、一番axes femmeを着ていた。なぜなら一番身近に店があったから。そして友達が大量にくれたからだ。

その友達は親類からもらったものの基本的に着ようと思わず私が好きな系統だからとくれたのだ。それはまあ大量に。突然やってきた段ボール2箱にたまたま家にいた妹と共におののき、中を開けたら全部axes femmeで歓喜の声をあげた春休みを忘れはしない。「こんなにもらっていいの!?」とびっくりして、次に彼女にあった時お礼として彼女が好きなキャラクターの文房具を大量にプレゼンした。

そこからしばらく、私は本当に幸せだった。その年は辛い実習が何度もあったが、平気だった。だって家に帰れば、大好きな可愛いフリルの服がたくさんある。クローゼットにしまいきれないほどある。休日になるのが楽しみだった。スーツではなく、可愛い服が着れるから。






昔から私はいわゆるフリルにピンク、リボンの服が好きだった。母がそういう服が好きで、だいたい母が選んでくる服はフリルかリボンがついていた。ほんの一時期ロック系の服に私が憧れた時の母の嘆きようは凄まじかった。フリルかリボンがついてないものでも、基本的にはお嬢様らしい、上品なデザインの服だった。(基本的にこの頃私が着ていたのはしまむら、イオン、セシール、ニッセンの服だった。axes femmeにこの頃出会ってたらもっと凄まじかっただろう)

でも、私は高校生くらいからそのような服を着るのも選ぶのも、億劫になっていった。

たくさんいるクラスメイトや部活動メンバーの中で、そのような服を着てるのは私だけだったからだ。

皆、流行りの服を着ている。フリルやリボンがついているのは私だけだった。


「七竃さんってほんとお嬢様やんね」「私達にはそんなん着れへんわ」


私がだんだん言われ始めたことだった。その頃はそんな風に言われても、居心地が悪いと思っても、やめようと思わなかった。

流行の服を着てる自分を思い描けなかった。何よりその頃はまだ基本的に母と共に服を買いに行ってたため、母が気に入った服じゃないと買ってもらえなかった。(私はお小遣いをもらっていなかった)自分と母の好きな傾向の服がたまたま一致していたのもあって、流行の服は自然と買わなかったのだ。

やがて大学生になり、共学ではあるもののほぼ女子校のような環境のコースに進学した。そこで私が見たものは、見事に着ているジャンルがバラバラの女子大生の集団だった。

量産型女子大生もいれば、きゃりーぱみゅぱみゅのような格好の女子大生、サブカル系の女子大生……。フリルやリボンのお嬢様のような服を着ているのは私だけだったが、浮きはしなかった。

主に着ていたのはしまむらだったが、むしろ周りには「しまむらでここまでお嬢様な雰囲気の服装できるん!?」と言われていた。絶対しまむらちゃうやろwwwと言われていたが同級生がたまたましまむらでバイトするようになって「店入ったら七竃さんの服がめっちゃあった」と言われて驚かれた。しまむらにはLIZ LISAコラボの服なども結構あったため、それを私は着ていたのである。

私がaxes femmeに出会ったのはその頃だった。大学生になり、行動範囲が一気に増えその分出歩くようになった。LIZ LISAにも、Secret Honeyにも出会った。とても可愛かったが、一番手に入れやすかったのがaxes femmeだった。大学の履修の関係と家の門限の関係でバイトがほぼできなかったため、私はaxes femmeをなかなか手に入れることができなかった。わずかなバイト代は、友達との交友費に消えた。その頃の私には、可愛いフリルの服を頑張って買うよりも、数少ない友達との遊びの方が大切だった。

axes femmeがオタサーの姫の服とか、痛い服の象徴とか言われていることを知っても、axes femmeへの憧れは消えることはなかった。こんなに安くて(他のブランドに比べたら)、こんなに可愛い。なかなか手に入れられないけど、頑張ったら手に入る。

初めて自分でaxes femmeのワンピースを買った時、本当に嬉しかった。axes femmeにしてはフリルが少ないニットワンピだったけど、本当に嬉しかった。白くて可愛い、裾が広がるニットのワンピース。後ろの細い編み上げリボンがまた、ツボだったのだ。(コートを着たら隠れちゃうけども)

そしてそれからしばらくして、上記の段ボール2箱送付事件が起こった。そのちょっと前に友人に「お願いやからもらってくれ」とaxes femmeのワンピを押し付けられる形でもらった。可愛くて何度もお礼を言ったのを彼女は覚えていたらしい。期末テストが終わってすぐに「まだあるからもらってくれ」LINEが来て了承したら、想定していた以上の量が届いたのだ。今でも彼女には感謝している。

私はその大量のaxes femmeを、もらってから2年ほど着倒した。着ればテンションが上がるし、何よりお世辞かもしれないが周りから「似合う」「可愛い」と言われるのが嬉しかった。

可愛いと褒められたのが、親以外、特に同性の友達から今までなかったから余計に嬉しかった。

が、今年私は社会人になり、入社してすぐの土日に、いつものようにaxes femmeに袖を通してみたが、なんだか違和感があった。

どことなく、幼いのだ。

たしかに服は可愛い。でも、鏡に映る自分とそのaxes femmeはなんだかとてもちぐはぐだった。ついこないだまであんなに可愛かったし馴染んでいたaxes femmeは、妙に浮いて見えた。その服だけぽっかりと、浮き上がって見えた。

いやいや気のせいだと思ったものの、一階に下りると母に言われた。

「あんたそんなみっともない服で外行くつもり?いつまでも大学生ちゃうねんから」

ようやく私は気づいた。なぜ服が浮いていたのか。

私が年をとったのだ。

可愛いフリルの服が似合う、許される年齢ではなくなったのだ。フリルはフリルにしても、axes femmeのようなフリルは似合わなくなったのだ。この服が似合う、許される環境と年齢じゃなくなったのだ。

猛烈に悲しくなった。どんなにフリルやリボンが好きでも、許されなくなってしまったのが。本当は今までもそろそろどうなのとか周りから思われてただろう。でも、今までの私は浮いていても平気だったのだ。というより気づいていなかったのだ。

だって可愛かったから。自分に似合っていたから。馴染んでいるのが分かったから。

今でも頑張れば似合うと思う。でも、頑張らなければ似合わない。頑張っても、痛いと思われる年齢になった。それが身にしみてわかったのだ。

私がいるのは田舎で、特にそういう服は浮きやすい。今までも浮いているのはわかっていた。浮いていても許される年齢ではなくなったのだ。

周りではなく、自分がそうなのだと認識してしまったら私はもう自分の部屋に戻るしかなかった。……クローゼットをあけても、服がない。わずかにある出勤用の服しかない。それ以外はaxes femmeをはじめとした、大学生のフリルの服ばかりだった。





就職して半年、少しずつ給料で年齢にあうシンプルな服を買い集め、リボンはあってもフリルはほぼなくなった。この程度なら普通に馴染むと、自分の中で買い物をするときにどういう時に着れるかを考えて買うようになった。それでも同期から見たら「お嬢様みたい」とか言われてしまうけれど。少なくとも幼くはないそうだ。そして彼氏にも、axes femme以外の服で会うようになった。

「すごく綺麗」
「グッと大人っぽくなった」

彼は私のことをいつだって褒めてくれる人だった。でも、綺麗と言われたのは初めてだった。優しい彼は今まで言わないでくれたのだ、現実を。ただただ、感謝でしかない。彼は私の幼さを許してくれていたんだなと思い知った。




季節が春から夏、そして、夏から秋になった。秋のはじめにしては暑かった本日、連休明けに向け本格的に衣替えをしたところ、ちょうど秋冬モノのaxes femmeが大量に出てきた。友達が送ってくれたaxes femmeはほぼ春、秋冬のものだった。春にも大量にかけていたがほぼこの子達を着ることはなく、夏になりしまいこんでいた。

結果は分かっているものの、軽く前に当てて鏡の前に立ってみた。……似合わない。春に見た時よりも、ずっと違和感があった。

肌はこのaxes femmeが似合っていた頃よりも、吹き出物が増え硬くなった。表情も疲れている。すっぴんだから余計にそれが目立っていた。今着ている、シンプルな服の方が自分に馴染んでいた。

とても悲しかった。だった一年前は、この服を着て外に行けたのに。今はこんなに似合わない。この服を着て外を歩く自分が想像できない。

覚悟を決めて、全部紙袋に入れた。axes femmeだけではなく、フリルのついたワンピースやミニスカートを全部、全部紙袋に入れた。

私がもう着れなくなったもの。着たら痛いもの。

全部全部押し込んだ。明日になったら、売りに行こう。捨てる勇気はない。こんなに可愛い服を、ゴミにはできない。着れないけれど、ゴミ捨て場に持っていくには惜しかった。

axes femmeは卒業する。もう私には着れない。卒業しなければならない。春には本当はわかっていたけど、ようやく決心がついた。今でも本当は涙が止まらない。本当は着たい。着ていたい。でも、何より着れない、着て歩く自分が想像できないのが辛かった。

オトナ女子とか、今は年を取っても可愛い服を貫ける環境に、昔よりはなってるかもしれない。可愛いキラキラしたものも、大人の女性が持ち歩けるものがある程度増えたと思う。それでも、ある程度だ。なんだかんだで女子ではいられなくなる時が来る。私はもう、きてしまったと思う。これからもっと来るだろう。まだ許される品のあるお嬢様系統の服が似合わなくなる時が近々来る。これはきっと始まりだ。

もう既に女子ではなくなった私は、女性になって、そしてすぐに淑女としての振る舞いを求められるようになる年齢になる。きっと似合う服はどんどん減っていくだろう。

ありがとう、axes femme。本当に大好きだった。今まで夢を見させてくれてありがとう。

axes femmeごときで大げさな、と思う人は多いかもしれない。でも私にとっては大きなものだったのだ。本当に、幸せだったのだ!!ひらひらしたリボンにアンティークな雰囲気のフリル、アクセサリー!!!大好きだったのだ!!!!

……だったではない、今でも大好きだ。それに嘘はつけない。でも、もう着れない。

店の前を通ることはあっても、ショーウィンドウを眺めるだけになるだろう。着ることができない服がたくさんある店に入ることは、とても辛い。正直想像しただけで泣いてる。

夢を見るのはもうおしまい。axes femmeによく出て来るディズニーのプリンセスは王子様が迎えに来るし、もしくは見つけに行くけど私は現実的に見てそもそもお姫様でもないし、ましてやお嬢様な服もそろそろ許されない。

でも今日は、幸せだった大学生時代を思い出して寝ることにしよう。

スッカスカになったクローゼットは見ていて寂しいけど、なんだかとてもスッキリとしていた。