七竈の食器棚

徒然なるものを竃につめこんで。

ハガキが掴んだチケットとDVD〜他担から見た亀梨和也ソロコン映像化備忘録〜

ここに一枚のCDがある。

 

そのCDは赤と黒で構成された背景に、憂い顔の美男のモノクロ写真が中央部に配置されている。

 

これは、KAT-TUN亀梨和也のソロデビューシングル、『Rain』だ。2019年5月15日に発売された。

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Rain | J Storm OFFICIAL SITE

 

亀梨和也二階堂ふみと共にダブル主演を務めたドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』の主題歌だ。このCDには主題歌の『Rain』と、日本テレビプロ野球中継のテーマソング『手をのばせ』、ほかカップリングが初回1.2.通常盤を合わせて4曲収録された。

 

さて、私が今回語りたいのはこのCDに関してではない。いやこの亀梨さんのCDに収録されている曲はどれも素晴らしくて大好きである。だが今回語りたいのは曲ではない。

 

曲についていた特典映像のことである。というかそれに関するハガキたちのことである。

 

私は山田涼介と目黒蓮のかけもち担であるため、亀梨担ではない。だが、それでもこの特典映像を手に入れるため、身近な亀梨担がどれほど頑張っていたか、そしてそれがどれほど参考になったか、尊敬の意を込めて今回このブログを書いている。

 

この『Rain』は、通常のジャニーズのCDに比べて、特に初回限定盤1の値段が少々張る。初回限定盤2も、1ほどではないが張る。限定盤1には表題曲『Rain』のMVとそのメイキング、限定盤2には『手をのばせ』のMVとメイキングが入っている。だが普通ならもっと安いであろう。普通ならば。

 

どこが普通ではないかというと、初回限定盤1にはKAT-TUNの充電期間中の2017年に開催されたKAT-TUN  KAZUYA KAMENASHI CONCERT TOUR 2017 The - 〜Follow Me〜』の2017年8月31日公演を全曲収録、初回限定盤2にはこのコンサートツアーのオーラスのメイキングとダイジェストが収録されているのだ。

 

言ってしまえばこの『Rain』の初回をそれぞれ買うだけで新曲4曲とソロコンサートの一公演まるまるとオーラス(ダイジェスト)がついてくるのである。

 

亀梨和也のファンは、このソロコンサートの映像化を願い、ひたすらジャニーズ事務所と版元であるジェイ・ストームに要望ハガキを送り続けていた。

 

仕事や家庭の都合上どうしても行けない。

行きたかったが、外れてしまった。

行ったけど手元に映像を残したい。

 

色々な亀梨和也のファンがそれぞれの思いを胸に、ハガキを書き続けた。その様子は、Twitterで#亀梨和也ソロコン映像化希望を検索すると山のように出てくる。2017年7月から、ソロデビューと映像化決定が発表された2019年3月24日まで、約1年半ひたすらハガキを送り続けたのだ。

 

私の身近な亀梨和也ファンもそうだった。その人はその頃足の調子が悪く、かつ、家庭の事情でこれまでコンサートに一度も行けないでいたのだ。それでもこのソロコンサートだけは行きたいと応募をしたが、外れてしまった。一般応募でかけ続けたチケットぴあが、かけすぎて「よく使う項目、勤務先」とiPhoneに間違って認識され登録されてしまうくらいには彼女はかけ続けた。外れてしまったが。

 

せめて、せめて映像に残って欲しいと彼女は思いを筆に乗せ、ハガキを送り続け、そのハガキたちをSNSに載せていた。手は仕事による腱鞘炎で痛めていたため、ワードを駆使してひたすら送り続けていた。

 

そんな彼女に、奇跡が起きる。いつものようにSNSにハガキを載せたら、あるDMが入ったのだ。

 

 

『要望ハガキ、とても感動しました。実は、亀梨くんのコンサート、同行する人が一人どうしても行けなくなってしまったんですけど……よかったら、同行してもらえませんか?』

 

 

そのありがたいDMに彼女は悩み続け、悩み続け、家族とも相談して……。彼女はとある公演に同行させてもらえることになった。

 

帰ってきた彼女は、膝から崩れ落ちて泣いていた。感動した。かっこよかった。絶対に映像化してほしい、と。そして、彼女はまた筆を取った。その頃にはもうたくさんの亀梨和也のファンがハガキをたくさんアップしていた。皆、思いは同じだった。ただ、自分の愛するアイドルの記録を残して欲しい。努力を、頑張りを、映像として残して欲しい。

 

その一心だった。

 

 

 

 

 

 

 

映像化決定の報せは、なかなか届かなかった。年が明けKAT-TUNの充電期間が終わり、亀梨和也主演ドラマ『FINAL CUT』の主題歌がKAT-TUNになり、シングルも発売、そして東京ドームでコンサートを行った。

 

 

ソロコンサート開催発表から一年経っても、映像化の知らせはなかった。KAT-TUNの全国ツアーが行われる中、彼女たちはKAT-TUNを応援しながら、ソロコンサート映像化希望のハガキを送り続けた。

 

 

それでも、報せは届かなかった。ソロコンオーラスから一年経っても、事務所からの知らせは来なかった。

 

気づけば2018年が終わろうとしていた。

 

熱心な亀梨和也ファンたちは、疲れ始めていた。DVD収録しているという情報があっただけに、望みを捨てきれなかった。

 

 

そして、報せのないまま2019年を迎えた。

 

 

 

 

ハガキを送り続けて1年5ヶ月。喜びの知らせなのだが、絶望にも似た知らせが彼女たちに届いた。

 

亀梨和也のソロコンサートよりも後に行われた、KAT-TUNのコンサートツアー『CAST』の映像化決定の知らせだった。

 

私はジャニオタでしか生きてないので他の界隈をあまり知らないが、ジャニーズのコンサートというのはデビュー組であっても全ての舞台、コンサートが映像化するわけではない。

 

今をときめくKing & Princeの冬の主演舞台、『JOHHNY'S IsLAND』もとい『JOHNNYS' WORLD』はHey! Say! JUMPが主演を務めた初演の2012年から一度も映像化されていないし、亀梨和也と同じKAT-TUNのメンバーである上田竜也のソロコンサートも二回行われているが、二回とも映像化されていない。

 

DVD収録があっても映像化されていない舞台・コンサートというのはたくさん存在する。おそらく会社の記録用として収録されるのだろう。

 

……頭では理解していても、それでも、それでも。

 

 

 

2017年当時、亀梨和也は多忙だった(今もだ)。他担の私から見ても多忙だった。充電期間の最中、主演の連続ドラマ『ボク、運命の人です。』の撮影と、山下智久と共に歌った主題歌『背中越しのチャンス』のプロモーション。

 

出演した映画『美しい星』のプロモーション。

 

24時間テレビのメインパーソナリティー。そして24時間テレビ内で放送される主演ドラマ『阿久悠物語』の撮影。

 

そしてレギュラー出演しているGoingの企画と、野球の取材。

 

その合間を縫ってのソロコンサートの準備。

 

 

 

 

芸能人にとっては当たり前のスケジュールかもしれない。何を今更、売れっ子ならそんなもんだろうと鼻で笑う人もいるだろう。でも、彼は当時『KAT-TUNを守るための充電期間中』だったのだ。必死で彼は、戦っていたのだ。KAT-TUNを守るために。

 

 

後に私は、当時ソロコンサートについていた宇宙Sixの目黒くんに沼落ちしたためそのライブレポート記事を買い漁ったが、艶やかで美しい写真の数々に目を見張った。

 

踊り、歌い、フライングをし……。

 

上記の仕事をこなしながらの準備とコンサートツアーは、さぞハードだっただろう。そのコンサートは7月から10月と、3ヶ月もの期間のコンサートだ。

 

 

ファンも、とにかく彼の戦いと努力の成果を映像に残して欲しかったのだ。自分達が見たかったから、それもあるだろう。だが、これは大きな仕事の記録なのだ。亀梨和也という、一人の男の成果なのだ。

 

『どんな形でも、受注生産でもいいから、映像として残して欲しい。』

 

身近な亀梨ファンはそう言いながら、日々ハガキを書いていた。

 

 

 

要望を送るのは、今はSNSもあるし、公式サイトにアクセスしてお問い合わせフォームに送るという手もある。

 

だが、ハガキというのは書いて、切手を貼って、郵送してもらうという手続きがある。切手代という料金も発生する。郵送してもらうのもたくさんの郵便局職員たちの手を経て、宛先の会社に届く。ハガキが届くまでにコストがかなり発生する。

 

そして、おそらくだが(特に出版社で)意見ハガキというのは会社内で有力視される傾向にある。私が好きな漫画、『月と指先の間』(作:稚野鳥子)にこんなシーンがある。少女漫画家の主人公が自分の漫画のレビューに落ち込んでいるところに、主人公の漫画が連載されている雑誌のアンケートを渡して編集長が語りかけるのだ。

 

『大人の女性の読者はほとんど感想を手紙に書いてきません』

『一通来れば後ろに百人以上は同意見の人がいると思っていいでしょう』

 

大人になればなるほど、素直な気持ちを文章に託すのはできなくなる。日常が忙しいのもあるが、子どもと違って作家に文章が変と思われないか、誤字はないかと気になるようになるからだ、と。

 

実際、件のハガキをきっかけにコンサートに同行させてもらえる奇跡を受けた彼女もよくよく文章を考えて構成して、ハガキを送っていた。文章を、相手に悪く思われないように考えて書くというのは労力がいる。頭も疲れるし手も疲れる。

 

 

そんな中、ファンたちは毎日毎日、ハガキを送り続けた。切手代が、おそらく一枚のコンサートDVDの値段になるくらいには。いや、仮に一週間に三枚送るを1年繰り返すとしても、8000円は超える。コンサート一回分の値段、あるいはそれ以上の値段を切手代、ハガキ代に費やしたファンもいるだろう。

 

 

もう、出ないのではないか……と落ち込む彼女に、「Hey! Say! JUMPは2年前のコンサートをまるまる映像特典でつけてくれたから出ると思うよ絶対」と励ましたことを昨日のように覚えている。

 

 

そして、3月24日の夕方。彼女から絶叫のようなLINEが届いた。

 

「亀梨くんソロデビュー。ソロコン、特典でまるまるつく!!!!」

 

 

 

他担だが、心の底から喜んだ知らせだった。もちろん映像化する企画は会社内で起こっていただろう。亀梨くん本人も、映像化のために動いていたのだろう。だが、ハガキが届いていたのは大きいと、私は信じている。ひたむきに彼女らは送り続けていた。毎日のようにハガキを送り続けていた。出ると信じて。発売されると信じて。一年半もの間、ただ書き続けたのだ。

 

その知らせから1ヶ月半後、めでたく2019年5月15日、『Rain』は発売された。ライブDVDではないので、セットリストから選んで映像を見るなどの、チャプター機能はついていない。だが、これをCDの特典として見ていいのかというほど素晴らしいLIVEの様子がそこに映っていた。

 

見ながら私も泣きそうになった。これは、亀梨和也さんと、ファンが勝ち取った映像なのだと。

 

テレビの中に映る亀梨さんは、とても美しかった。私はその時、亀梨さんを夢中で見ていた。

 

その一月後、後ろで踊る当時宇宙Sixにいた目黒蓮に突如沼落ちすることを知らずに亀梨和也を目で追っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、『Rain』発売から一年経ち世界は大きく変わった。コンサートや舞台が数多中止になり、発売を予定していたCDやDVD作品がいくつも無期限延期になる事態が起こっている。亀梨ファンの活動を参考にして「映像化してほしい」とハガキを送った『滝沢歌舞伎ZERO』も、発売決定後に新型コロナウイルスの影響で発売の延期が決まった。そして今もなお発売日が決まっていない。Hey! Say! JUMPは新曲の発売日が決まっているが、これも今後どうなるかわからないだろう。発売されると信じているが、毎日不安ではある。

 

コロナでいろんな界隈のファンが悲鳴をあげる知らせが毎日出る中、私の推しの目黒蓮くんは快進撃を続けている。この記事を書いている昨日も私は別の意味で悲鳴を上げることになった。彼が専属モデルを務める雑誌『FINEBOYS』の表紙を、2号連続で彼が務めることになったのだ。緊急事態宣言の影響で撮影ができず、先月の号のために撮影した写真の未公開カットで構成するという。

 

私は先月号の購入後、重版決定と表紙起用のお礼のハガキを送った。緊急事態宣言はいろんな会社の勤務形態を変えた。出版社も同様であろう。そんな中、問い合わせ対応、重版対応をしてくださった日之出出版さんにただ感謝を送りたかった。編集部ごとにハガキを振り分けるという手間を考えるとメールの方が良かったかもしれないが、ハガキで送った。私の一枚は、おそらくだが後ろに100人の意見があると信じて、ハガキを送った。

 

そして、今日もまたハガキのためにペンを取る。このコロナ禍の中、また目黒蓮くんを起用してくださったお礼のために。また今後も、載せてもらえるように。

 

ハガキで何が変わるかはわからない。でも、変わるかもしれない。それを教えてくれたのは、一年半送り続けた亀梨ファンたちだった。

 

その亀梨ファンたちもまた、コロナの影響で悲鳴を上げることになった。修二と彰から15年ということで発売されることになった亀と山Pのアルバムが発売の二週間前に延期になり、ドームコンサートは大阪、東京共に中止になった。発売も開催もコロナが落ち着かなければ、ほど遠い。

 

私の部屋には、未使用のハガキがたくさんある。コロナが落ち着いて、もしコンサートが開催されたらハガキを送るつもりだ。SnowManのデビューコンサートが開催され、亀と山Pのコンサートもまた開催が決まったらこの子たちを使うことを決めている。大きく、『映像化希望!』と書くつもりだ。ハガキの力を教えてくれた亀梨ファンのために、勝手ながらハガキという援護を送ろうと思っている。

 

そのためにも私はマスクをし、手を洗い、うがいをする。それしかできないのが歯痒いが。早く、早く元の日常が戻ってきますように。推したちが歌って踊れる日々が、戻ってきますように。